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いろいろな色のトマトを見てみよう
野菜などの多くの果実は、成熟にともなって色が変化します。 みなさんが一度は食べたことのある一般的なトマトは、 数日の間に未熟な緑色から成熟した赤色に変わり、品種によっては、緑色から黄色やオレンジ色などにも変わる多彩な野菜の一つです。 さて、トマトの色が変わっていくとき、どのような変化が起きているのでしょうか。
トマトの色の変化は、主に果皮(トマトの皮の部分)に含まれる色素成分の変化によるものです。色素成分が合成されたり分解されることで、トマトに含まれる色素の量が変わり、様々な色に変化します。
植物の色素成分は、「カロテノイド系」、「フラボノイド系」、「ポルフィリン系」に分けられます。緑色トマトに多く含まれるクロロフィルという色素は、「ポルフィリン系」、 赤色トマトに多く含まれるリコペン、黄色トマトに多く含まれるカロテンと呼ばれる色素は、「カロテノイド系」に分類されます。フラボノイド系の色素はトマトにも含まれていますが、トマトの色にはほとんど関与していません。
まずはトマトの果皮を見てみよう
透過型電子顕微鏡(TEM)で見てみよう
赤色トマトの果皮付近の様子
その前に、ちょっと疑問!
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赤色トマトの果皮をさらに拡大して見てみよう
赤色トマトの果皮の細胞
植物の細胞内には、核やミトコンドリア、小胞体など動物細胞と共通する細胞小器官の他に、植物細胞特有の構造も存在します。細胞壁、液胞、色素体が代表的な構造です。
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ちなみに、フラボノイド系の色素は液胞に蓄積されているといわれており、トマトでは果実の色にはほとんど関与していません。 つまり、トマトの色は色素体に含まれるカロテノイド系色素によって決まっているのです。 植物細胞の中にある色素体が、果実の色に大きく関わっていることがわかりました。 未熟な緑色トマトが成熟した赤色トマトになるとき、色素体はどのような変化をするのでしょうか。
未熟の緑色トマトの色素体を見てみよう
緑色トマトの色素体
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緑色トマトの色素体には、チラコイドと呼ばれる細長い膜が観察できます。その膜が重なり合ったところをグラナと呼びます。また、色素体の基質の部分にはプラスト顆粒と呼ばれる黒い粒子が観察できます。この色素体の形は、葉などに多くある葉緑体の形とよく似ています。
一般的な葉緑体には、細長いチラコイドがたくさん観察できます。そして、このチラコイドにはたくさんのクロロフィル(葉緑素)が含まれています。 つまり、葉緑体がたくさん細胞内にあると緑色に見えるわけです。
赤色トマトの色素体も見てみよう
赤色トマトの色素体
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トマトが成熟すると、チラコイドに含まれるクロロフィルが分解されて、チラコイドの形が壊れ緑色が消えます。そして、たくさんのカロテノイドが合成されることでプラスト顆粒やカロテノイドの結晶が増加し、赤色のトマトに変化することが知られています。プラスト顆粒に含まれるカロテノイドの種類や量によってトマトの色が決まりますが、緑色トマトのように色素体の特徴で色を判別するには至っていません。
同じ品種のトマトを使って色の変化を見てみましたが、他の品種の違った色のトマトの色素体はどのような形をしているのでしょうか。
黄色トマトの色素体も見てみよう
黄色トマトの色素体
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黄色トマトの色素体は、緑色トマトの色素体より少し大きく丸い形をしています。 また、プラスト顆粒の量も多くなっているように見えます。チラコイド膜は規則性がなく様々な形をしており、膜の一部には膨らんだところも観察できます。その他に、小さい点々が集まったところも見つかりました
オレンジ色トマトの色素体も見てみよう
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オレンジ色トマトの色素体は、緑色トマトの色素体より少し大きく丸い形をしています。プラスト顆粒はとてもたくさん観察できます。また、チラコイド膜は短くなったものが所々に観察できます。その他に、小さい点々が集まったところや、丸くて大きなかたまりも見つかりました。
今回の観察で、トマトが緑色から赤色に変化すると、典型的な葉緑体の構造からユニークな形をした有色体に変化することが確認できました。 また、赤色、黄色、オレンジ色の色素体がそれぞれ違った特徴をもつことがわかりました。さらに詳しく形を比較してみると「色」と「色素体の形」を直接結び付ける特徴的な構造を知ることができるかもしれませんね。
2017.9.1公開
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