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納豆のネバネバの正体とは?
身近な大豆発酵食品である納豆は、蒸した大豆に納豆菌をかけて発酵させることで作られます。
それでは、納豆を一粒取り出して、見てみよう!
まずは走査型電子顕微鏡(SEM)で見てみよう
t-ブチルアルコール凍結乾燥法
この電子顕微鏡画像は納豆の表面をSEMでみています。
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納豆菌は別名、枯草菌ともよばれ、自然界にごくありふれた細菌の一つです。学名はBacillus subtilisです。納豆菌が大豆のタンパク質を分解する過程で、独特な味やにおい、粘りが作り出されています
SEMとTEMの違いについてはこちら
納豆の切断面をTEMで見てみよう
これは納豆の豆の断面をTEMで観察した様子です。
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急速凍結・凍結置換法
上の画像は急速凍結・凍結置換法という技法を使っています。細菌を-175℃という超低温で瞬間凍結して固定することができるため、遠心濃縮などの処理を行わず、最も「生」の状態に近い細菌の様子を観察することが可能です。この電子顕微鏡画像でも、納豆菌だけでなく、ネバネバの元となる成分が納豆菌の周囲に満ちている様子まで観察することができます
見よ、これが、納豆菌だ!
TEMで観察できるのは、納豆菌の内部構造です。原核生物である納豆菌の細胞内には黒い粒子として見えるリボソーム以外、目立った構造は見られません。動植物などを含む真核生物の細胞に見られる核やミトコンドリアなど、膜で仕切られた構造はありません。
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芽胞は細菌にとって環境が悪くなった時に休眠状態になるための細菌が自ら作るシェルターのような構造です。細菌は芽胞の中に自らを完全にコピーし、元々の体はやがて消滅してしまいます。芽胞になった細菌は水や栄養が極端に少ない環境下でも生き続けることができます。芽胞を作ることは、納豆菌の仲間、Bacillus属の重要な特徴のひとつです。
細胞壁を見てみよう
この画像は納豆菌の細胞壁部分の拡大像で、画像下側から細胞質、細胞膜、細胞壁となっています。細菌の細胞壁の厚さはわずか数十nm(1nmは1mmの100万分の1です)程度ですが、電子顕微鏡の分解能では細胞壁の中のさらに細かい構造まで見分けることが可能です。
細菌を分類するために広く使われている方法の一つに、グラム染色法があります。細菌をグラム染色という方法で染色し、紫色に染まるグラム陽性菌か、染色されないグラム陰性菌の2種類に分類する方法です。ちなみに納豆菌はグラム陽性菌に分類されます。
グラム染色法は、一般的な光学顕微鏡では小さすぎて見えない細菌の細胞壁の構造の違いを、色の違いとして表して見分ける方法なのですが、電子顕微鏡ならば細胞壁の構造の違いを直接見ることができるため、グラム染色をしなくてもグラム陽性菌とグラム陰性菌を判別することができます。
2017.5.30公開
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